収蔵品データベース

薄雪うすゆき

大正6年(1917)

紙本墨画・軸

173.0×95.0 ㎝

金鈴社第一回展出品作の下絵。
近松門左衛門作の世話物浄瑠璃「冥途の飛脚」に取材した作。「冥途の飛脚」は正徳元年(1711)に大坂竹本座で初演されました。大阪の飛脚問屋亀屋の養子・忠兵衛は、新町の遊女・梅川と馴染みになります。金銭に困っていることを友人の八右衛門に暴露されて逆上し、公金三百両に手をつけて梅川とともに郷里の新口村に逃げ、実父に別れを告げますが捕えられます。
清方は近松の世話物を好んでおり、特に梅川の人物像に関心を抱いていました。そして中村鴈次郎が忠兵衛、中村福助が梅川の役どころの舞台を見たことが本作の制作の直接的な動機になったといいます。作品名の「薄雪」は儚く消えていく二人の運命を象徴的に示す意味で付けられました。